96関係各機関の支援を受け、経営再建の道を一歩、一歩と進めていた当社では、「3次支援」の措置を頂いた後も、より一層の効率的な鉄道経営を追求し、可能な限りの経費抑制に努めました。・これまで外注していた駅清掃業務の一部を駅員の作業ダイヤに組み込み直営化・駅員・乗務員に支給のワイシャツをこれまでより単価の安い薄手のものに変更・各駅で発生するゴミ処理を1業者に一括発注・エスカレーターメンテナンスをメーカー系から独立系の保守会社に変更・本社機能を東京都墨田区押上の賃貸ビルから新鎌ヶ谷高架下にある鉄建公団現場事務所だったプレハブへ移転・事業者として社員を対象にかけていた団体定期保険、養老保険の解約・自動改札機など営業機器の保守単価の見直し・東京電力との契約を見直し、固定料金を下げ、より合理的な契約に変更こうした取り組みには、社員の協力が欠かせません。当社は労使協調の気風の下、社員会とも協調して全社一丸となって経営改善に向けた取り組みを推し進めましたが、1997(平成9)年度においても、年度収支は約33億円のマイナスで、赤字体質からは抜け出せてはいませんでした。一方で、北総線の高運賃については、沿線の自治体からも値下げを求める声は強く、毎年春には、沿線の首長名で当社に運賃値下げの要望書も出されていました。しかしながら、元本償還は支援措置で猶予いただいているものの、鉄建公団への利払いは年間約60億円、累積赤字も400億円を超える現実の前には如何ともし難く、当社は1998(平成10)年7月、運輸大臣宛に平均10.1%の運賃変更の申請を行いました。当時の報道発表資料には、「この運賃改定により収益の底上げを図り、償却前利益を計上することが出来れば、巨額の債務に対する利息支払いがスムーズになり、自立経営に向けて一歩を踏み出す事が可能となります。また、これが現時点で、ダイヤを維持して列車を安全に運行し、利用者の皆様に対するサービスを低下させない唯一の方法とならざるを得ません。」と、値上げでご負担をおかけすることになるお客様へ向けた当社の苦衷が述べられています。運賃改定に際しては、家庭の負担増を出来るだけ避けるため、通学定期運賃については据え置いたほか、昼間の買い物や土休日の外出需要に向け、33%割引となる15枚綴りの昼間割引回数券、土休日回数券を新設することや、運行面のサービス向上策として、急行増便を含む列車増発、および終電時刻の繰り下げ、始発時刻の繰り上げを内容とするダイヤ改正を11月に行う事、小室駅にエレベーター等バリアフリー対応設備を新設することも合わせて発表いたしました。しかしながら、北総線の運賃は、1995(平成7)年4月に続き、昨年(平成9)年4月にも消費税率改定(3%から5%へ)に伴う値上げを実施したばかりであり、度重なる値上げ発表に、当時、沿線で発行されていた幾つかのミニコミ紙の紙面には「平成不況の真っ只中、この時期になぜ値上げなのか!」、「ああ、東京が遠くなる」などの見出しが躍り、当社は厳しい批判に晒された一方、別の観点から当社につ1998–平成10年9.度重なる運賃改定に 値下げを求める住民団体発足
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