北総鉄道50年史
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2021(令和3)年8月上旬、白井市役所の裏手にある施設の庭で、約30年前に埋められたタイムカプセルが掘り起こされました。タイムカプセルに入った当時の小中学生約600人の作文の中には「北総線の運賃が安くなってほしい」旨が書かれているものがあったと言います。今では働き盛りとなっている彼らの願い、ほんの一部かも知れませんが叶うのが、奇しくも北総鉄道が50周年を迎える2022(令和4)年であります。思い返せば、当社50年の歴史は、奇跡の積み重ねでありました。50年前、千葉ニュータウン構想が生まれなければ、そもそも北総開発鉄道は生まれませんでした。国の成田新幹線構想が実現していれば、北初富駅~小室駅間のわずか7.9kmのローカル線が、やがて成田、羽田両空港に直結する“世界の足”に成長することもありませんでした。そして“空気を運ぶ”と揶揄された北総線に、京成電鉄を始めとする千葉県、都市再生機構、沿線市などの株主の皆様、国土交通省、鉄道・運輸機構などなど多くの皆様の多年に亘るご支援がなければ、その途上で会社は倒れていました。また、経営難が続く中、どの時代にあっても地域の足である鉄路を守るため、それぞれの持ち場で奮闘してくれた、社員始め、関係会社の多くの人々の姿がありました。そしてなによりも、今まで北総線をご利用いただいた10億人以上ものお客様の支えがあったからこそ当社はここまで来れたのです。私たち北総鉄道が50周年の先に見据えるのは次の50年。そこにはこれまで同様、多くの試練が待ち構えていると思います。しかし、困難に直面した時は、創業時に「北総開発鉄道デザイン・ポリシー検討委員会」が目指した、“高雅さと清新さ”に立ち返ればいいのです。また、地域と共に歩むという原点に立ち返ればいいのです。今の北総鉄道に、あの斬新なゲンコツ電車やロボット駅を始め最新技術を導入したような「先進性」はあるか。震災にも耐える強靭な線路を建設した「安全最優先の思想」はあるか。「あの電車に乗ってみたい」と思わせられる魅力はあるか。そして、地域の足としての「使命感と安全意識とサービスの心」は十分か。この先も北総沿線が皆様に選ばれる地域であり続けるため、私たちはその高雅清新のスピリットを携え、沿線の皆様と共に未来へと続く線路をひたむきに、そして力強く進んでまいります。次の50年に向けて……。1502021–令和3年5.エピローグ  次の50年に向けて

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