1462021(令和3)年6月23日、北総本社で開催された第49期株主総会において、室谷社長は「運賃値下げの可能性について検討に着手する」旨を発表しました。2020(令和2)年度の北総鉄道の輸送人員は、緊急事態宣言や“コロナ自粛”の影響で、前年比23.3%減、営業収益も24.2%減となりましたが、年度当初より安全の確保を前提に最大限のコスト削減に努め、最終利益は12億6,100万円と、前年度からマイナス51.8%もの大幅な減益となったものの黒字は確保。これにより、当社が創立50周年を迎える2022(令和4)年度中には、累積損失解消の見込みが立ったのです。思えば、最大447億円にも上る累積赤字に苦しんだ当社が、2000(平成12)年度に単年度黒字に転換して以来20年以上の時を経て、こうした検討にも着手出来る状況となったのです。コロナ禍で運賃収入が大きく落ち込んだこのタイミングでの値下げ検討表明については、概ね歓迎する声がある一方で、一部支援関係者からは心配の声や強い懸念も寄せられました。累損解消の見込みが立ったとはいえ、当社が抱える有利子負債は未だ600億円以上、鉄道・運輸機構への償還もあと十数年続くのです。ご心配は当然のことでありました。こうした中、運賃値下げの検討は、沿線の一部で人口減少が顕在化している現状や、新型コロナウイルス感染症拡大による新しい生活様式が浸透し、今後の通勤需要の先行きも不透明という状況を踏まえ、総合的かつ慎重に進められました。そして2021(令和3)年11月、当社は、平均15.4%の運賃値下げを2022(令和4)年10月1日から実施することを国土交通省に届出たのです。1 2022年10月1日から値下げすることを発表すると新聞各紙は 大きく取り上げた(2021年11月20日付 読売新聞)2 2021年11月20日付 千葉日報3 2021年11月20日付 産経新聞その内容は通学定期運賃の大幅値下げ子育て世代に配慮し、若い世代の沿線入居促進に繋がるよう、家計への負担の大きい通学定期運賃を大幅に値下げ(マイナス64.7%)。北総線内の移動を促進する普通運賃の値下げ初乗り運賃を210円から190円に引き下げ中距離帯を重点に最大100円(ICカード利用の場合105円)の値下げを行い、北総線内の移動を促進し、沿線全体の活性化に繋がるような運賃体系に。 通勤定期運賃も普通運賃に準じて値下げを実施 平均13.8%の値下げこの値下げは、安全・安心な輸送サービスを安定的に提供し続ける上で前提となる会社の経営の持続性や安定性を将来に亘って確保出来る範囲で、できる限り利用者の声や沿線自治体の子育て支援策やまちづくり施策との整合性も勘案し、「利用しやすさ」の提供と、「事業基盤の維持・向上」を図ろうとする、いわば当社にとって乾坤一擲の企業戦略であり成長戦略でもあるのです。2021–令和3年4.次の50年への戦略。コロナ禍の 厳しい環境下での運賃値下げを決断
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