北総鉄道50年史
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140誰が想像できたでしょうか。世界中の人々がマスクを着け、不要不急の外出ができなくなり、医療崩壊するほどのパンデミック(世界的大流行)が起きることを。2019(令和元)年12月、中国武漢に端を発するとされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全世界に蔓延し始めるのでした。日本国内では、2020(令和2)年2月に香港から日本に向かった大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染者発生が確認されたのを皮切りに感染者数は急増、4月には安倍晋三首相により日本で初めての緊急事態宣言が発令されました。これにより街からは人が消え、鉄道利用者も激減、当社鉄道事業に暗雲が立ちこめるのでした。この未曽有の事態を受け、当社は、直ちにコロナ対策本部を立ち上げ、感染防止対策を進めて行きました。しかし、困難を極めたのはマスクの確保です。接客業である以上、駅員にとってマスクは必須です。当社もあらゆるルートを使い必要数量の確保に努めましたが思うに任せず。社員には、会社支給のマスクの使用枚数制限をするなど、何とかやり繰りをして凌ぎました。一方で、お客様からも様々な意見があがって来ました。「窓を開けてほしい」、「座席を拭いてくれないか」、「車内で話している人を止めてほしい」。その切迫した声は、社会の不安をそのまま代弁しているかのようでした。対策本部でも精力的に協議し、国土交通省の定めたガイドラインに基づき「車内の換気の徹底」、「手すりや吊革への抗菌・抗ウイルスコーティング剤の塗布」、「改札口、乗車券発売・案内等の窓口にアクリル板やビニールシートの設置」、「主要駅の混雑1お客様に安心してご利用いただけるよう車両抗ウイルスコーティングを実施2改札口にはお客様用消毒液も設置3新型コロナウイルスの感染拡大防止の啓発ポスター4「臨時ライナー」運行開始 印旛日本医大駅始発、千葉ニュータウン中央駅に停車。座って楽々通勤が好評(令和2年10月1日)状況の情報提供」など、できることを一つずつ徹底していきました。更に運転終了後の車内や駅では、連日連夜、吊革や手すり、券売機などを一つ一つ拭いて廻る車両担当職員や駅務員達の姿もありました。そんな中、ビジネス界で一気に普及したのが時差通勤やテレワークです。政府が“3つの密”(①換気の悪い密閉空間、②多数が集まる密集場所、③間近で会話や発声をする密接場面)がクラスター(集団感染)のリスクを高めると警鐘を鳴らしたこともあって、これまでわが国ではあまり普及していなかった時差通勤やテレワークの導入が急速に進むのでした。この時、当社で一つの取り組みが生まれました。本社勤務の社員を対象に、時差通勤も兼ね、時間をずらして日に何度か行う「駅の巡回」です。この駅巡回の特徴は、警備の腕章を付けて巡回する、いわば“見せる警備”でもありました。そのことを通じ、「乗客一人ひとりに目を配っている」ことをアピールし、コロナ禍で社会的な不安が渦巻く中、少しでも安全・安心の確保に貢献しようと、北総鉄道第13代・室谷正裕社長の発案でした。このように、当社では経営トップ以下全てのスタッフが、どんな困難な時でもアイデアを出し合い、難局を乗り切ろうと奮闘していたのです。2019–令和元年1.新型コロナウイルスの蔓延 令和新時代苦難のスタート

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