北総鉄道50年史
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15年振りの新型車両投入に沸く一方、社内では成田新高速鉄道(後の成田スカイアクセス線)の開業に向け、2005(平成17)年に立ち上げた特別工事部が動き出していました。2010(平成22)年開業予定の成田スカイアクセス線は、北総線・印旛日本医大駅から成田空港を結ぶ路線(19.1㎞)を新設し、完成後は新型スカイライナーや特急が上野・日暮里方面より北総線を経由して成田空港へ向かう路線です。この新型スカイライナーと特急は、これまでの北総線内許容最高速度(105km/h)を上回る時速130km/hで走行する計画となっていました。このため、当社では、高速列車運行対応のため、北総線内の軌道改良や追い抜き施設の整備を進めていくのでした。工事は、事業主体である「成田高速鉄道アクセス株式会社」からの受託により当社、特別工事部が行い、その陣頭指揮をとったのが京成電鉄出身の特別工事部長・大嶋雅夫氏でありました。「あの時は徹夜続きだった」と氏が振り返る工事は、待避線の増設から、変電所の更新、曲線改良、信号保安設備、防音壁の設置まで多岐にわたり、単なる改良工事の域を超えた大掛かりなものでした。中でも、作業員の団結力が試されたのがX字型の分岐器装置“シーサースクロッシング”の設置工事です。これは、電車がバックすることなく隣の軌道に進路を変えられる装置で、「ここが狂ったら収まらない」という肝心要の部分でした。作業を行ったのは電車の運行のない深夜。工事が行われた印西牧の原駅付近には、総勢400名以上の作業員が集結し、多数の投光器に照らされた現場はまるで「夜祭り」のようでした。作業は現地で組み立てを行い、後は組み上がったシーサースクロッシングを線路に一気呵成に運び入れるのです。運搬の邪魔になるため、線路沿いに等間隔に立つ電柱も取り外して万全を期しました。始発の時間が迫る中、設置は一発勝負でした。「エイヤー」と、400名のヘルメット姿の男達が息を合わせて数トンはある装置を線路に運びます。そして夜が白々と明ける頃には、何事もなかったかのように電柱が復旧し、寸分のズレもなく据え付けられた分岐器が、北総線のレールと共に煌めいていたのでした。この装置が後に、スカイライナー通過時の列車待避などで活躍するのです。他にも、一部駅間には、当社として初の装備となるC-ATS(自動列車停止装置)が設置されました。これは、運転士の失念や錯覚、濃霧や吹雪などの理由で、信号機の指示に合った運転操作をしていない列車に警告し、安全のため自動停止・減速させるバックアップ装置です。更に信号区間に合わせた細かいスピードチェック機能をはじめ、急カーブ区間や分岐区間、線路終端部などでの速度制限にも対応し、従来のATS装置と比べより保安度が格段に高まります。当時は2005(平成17)年4月25日に起きたJR福知山線脱線事故の衝撃も未だ冷めやらぬ頃であり、C-ATSは今後の北総線に不可欠の設備でした。1181成田新高速鉄道(Bルート:成田スカイアクセス線)の建設が具体化し、北総線内での高速運転を可能とするための改良工事を担当する「特別工事部」が発足(平成17年2月2日)2印西牧の原駅構内では両渡り分岐器を新設する大規模工事も行われた3待避設備新設工事中の東松戸駅4上りホーム新設工事中の小室駅2010–平成22年7.成田スカイアクセス開業 に向けた北総線内改良工事

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