「北総鉄道」に改名して間もない当社がこの時期に行ったのが、2005(平成17)年4月の「自治体助成による割引通学定期券」の発売でした。市や村域に千葉ニュータウンを抱える2市2村(本埜村、印旛村、印西市、白井市)からは、兼ねてより北総線の運賃値下げ、殊に通学定期券の割引率拡大についての強い要望が寄せられていましたが、当社は「厳しい経営状況下にあり、減収に繋がるような値下げ施策を取ることは現状では難しい」旨の回答をせざるを得ない状態が毎年続いていました。こうした状況が続く事を憂慮した2市2村の自治体は、子育て支援施策として財政出動を決断し、地元の高校生以上の通学者に対し、現行通学定期運賃から25%の助成を行う事としました。これは、当社が通常より25%割り引いた通学定期を発売し、引き下げ部分について自治体が当社に補填するというもので、これにより通学定期の実質割引率は50%から70%となりました。当社もこの取り組みに際し、定期券発売機の改修費用については自社負担とするなど協力を行い、2005(平成17)年度の通学定期券利用者数は前年度に比べて27万4,000人増加し、多くの沿線住民に支持されていることが証明されたのでした。この取り組みを実施した沿線首長からは、「子育て支援等の観点から学生の方々限定とはなりますが、通学定期券の補助制度を開始出来た。本制度により多少なりともご家庭の負担軽減に寄与できれば幸い。(佐藤栄一・印旛村長)」と、住民福祉政策実施への抱負が語られた一方、「今回の補助は、あくまで利用者個人に向けたもので、会社(北総鉄道)に対してでは無い。これが補助の基本的な考え方。この措置には高運賃が地域の発展を阻害しているという警告を含むものである。自治体が補助しなくても済む日が早く来るよう、会社には一層の経営努力を望みたい。(五十嵐勇・本埜村長)」との厳しいコメントも頂きました。こうして、沿線の一部地域限定ではありますが、通学定期運賃の値下げが実現しました。この取り組みはメディアでも取り上げられ、翌年の2006(平成18)年10月には、鉄道に関する国民の理解と関心を更に深め鉄道の今後一層の発展を期する目的で創設された「日本鉄道賞」において、「沿線在住の子育て世帯の負担軽減を実現した首都圏における初の事例」として、2市2村(本埜村、印旛村、印西市、白井市)と共に当社は日本鉄道賞「子育て支援賞」を受賞。鉄道会社と自治体がスクラムを組み“子育てしやすい街づくり”へ取り組んだ成果となりました。このほか2005(平成17)年5月、当社は本社機能を新鎌ヶ谷駅近くの高架下から、同じ新鎌ヶ谷地区の国道に面した北総線高架沿いの現在地に移転しています。移転に際しては新たな土地購入はせず、当社も地権者として協力した新鎌ヶ谷地区の区画整理事業で割り当てられた代替地を本社用地にあて、そこに2階建ての現社屋を建設しました。装飾など何も無い事務所然とした建物で、事務机やロッカーも旧本社からそのまま移動し、新たに用意したものもほぼ全てを中古品で揃えました。厳しい経営状況を反映した引っ越しでしたが、元工事現場事務所を流用した古いプレハブ社屋で、長年、隙間風や雨漏りに悩まされていた社員にとっては、士気の上がる移転であったことは言うまでもなく「心機一転、北総鉄道1122005–平成17年4.高運賃問題解消に向けた新たなアプローチ沿線自治体助成による割引通学定期券発売と本社移転
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